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山菜

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「奈緒子、今年は山法師にたくさん花芽が付いてるでしょう」
「ほんとね、これから真っ白になるのね」

山法師の花びらに見えるところは総苞片と言われ葉が変形したもの、真ん中の球状のところが花。
ハナミズキに似ているけれど、針状の枝の先に真っ直ぐ上を向いて花が咲く姿は山法師ならではの凛とした美しさがある。


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「三次の叔父さんが色んな山菜を送ってくださってね。奈緒子にって筍と蕨はどっさり。帰るとき持って帰ってお店で使うといいわ」
「ありがとう、助かる~。山菜って買うと結構高いし店番してるようなのは美味しくないもんね」
「まだお昼だけど、用意して食べようかねぇ」
「そうね、せっかくだからお義姉さんたちも声かけたら?」

圭くんや由香ちゃんは出掛けているらしくて、兄と佳代さんが2階から降りてきた。


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父と兄は早速ビールとお酒を持ち出して飲み始めた。
こういう料理はやはり母の得意分野で、私と佳代さんは母にあれこれ聞きながら3人で作っていく。


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「こういうもんを食べると寿命が延びるような気がするなぁ」
「ほんまじゃ、しみじみと美味しいゆうのは、こんな食べもんのことやな」
父と兄がそんなことを言いながらお酒を飲んでいるのを見て、佳代さんが
「あら、あなたはお酒が美味しく飲めたら何でもいいんでしょ」と茶化して皆で笑った。


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ホルモンに牛蒡を入れて味噌炊きにし花山椒を加えてひと煮たちさせたものも。
「花山椒鍋も美味しいけど、これもいいわね。私たちもビール飲みましょうか」
「そうよね」
「ねぇ奈緒子さん。パパの同じ部署でね、すごくいい人がいるの。ねぇねぇあなたあの人のこと、奈緒子さんに薦めてもいいでしょ」
「それは奈緒子しだいじゃ。俺はどっちでもええわ」
「あのね、奈緒子さんいい人がいるんだったらそれが一番いいと思うんよ。でもね、そう言う人いないんだったら会うだけでも会ってみる気ない?5年前に奥さまを亡くされてね、次男だし子供さんもいらっしゃらないの。確か奈緒子さんよりふたつくらい上だと思うわ。私もお会いしたことがあるけどとっても穏やかな人よ」

お義姉さんは一気に喋って母にも「ねぇ、いいお話でしょ。お母さんからも薦めてくださいな」と付け加えた。
母は「そうよねぇ、佳代さん気を遣ってもらってありがとう」と当たり障りのない返事をし、父は黙ってお酒を飲んでいた。

「奈緒子さん、会社勤めだと保障もあるし年金も退職金とかもあるじゃない。でもね自営だと自分の身体が資本みたいなものだし、これから先のことも心配でしょう。私もね、結婚だけが女の幸せだなんて思ってないのよ。でも歳をとると誰かが一緒にいてくれるってやっぱり安心感があるのよね」
「お義姉さん、ありがとう。でもお店がやっと軌道に乗ったばかりで、私まだ他のことを考える余裕がないのよね」
「そうなの?もしその気になったら考えてみてよね」
「ええ」

私は今までお店の切り盛りのことで精一杯で、自分の人生の行く末を考える余裕は本当になかった。
木嶋さんとのことはきちんと向き合って前向きに考えていこうと思っているけれど、今すぐにお店をやめてしまうことにどうしても結論が出せないでいるのも事実だった。
でも、休みが取れて横浜に行ったら母に話そうと思っていた。

「奈緒子、あんたの携帯じゃないの?鳴ってるみたいよ」
ソファーの上に置きっぱなしの携帯を取りあげて開くと原田くんからの着信だった。

「原田くん、どうしたの?」
「あのさ、結子から連絡あったか?」
「ううん、何も」
「さっき女房に付き合ってデパートに買い物に行ったらな、あいつのおふくろさんにバッタリ会ってな」
「うん」
「あいつ、昨日おやじさんの病院に運ばれたらしいで」

私は1年半前の自分の不始末が走馬灯のように蘇って、心臓が大きな音をたてて激しく波打ち嫌な予感に襲われた。

「これから行ってみるか?なっちゃん今どこにおる?」
「実家」
「そうか、出れるんだったら迎えにいくわ」
「悪いけどお願い、待ってるから」
「分かった、30分くらいで行くわ」

「奈緒子、どうしたの?」
「よく分からないんだけど、結子がおじさまの病院に入院してるらしいから、ちょっと行ってくるわ」

私は帰る用意をして原田くんの車を待った。







Commented by fusk-en25 at 2020-07-10 05:09
これ全部。本当に食べておられるのには。。
ちょっと(かなり)悔しい気がします。。

まあ。。あんまりちんまりと家庭に収まってほしくはないのですが。。
またその反面。。
色々な事故?を作り出して。。殺さないでくださいね。
私はハッピーエンドが好きなんです。
特に人殺しは嫌い。。
だから幕末ものや戦争ものはあまり読まない。
Commented by Mchappykun2 at 2020-07-10 06:36
アメリカにも山法師に似た木があります。もっとハナミズキに似ていて、mountain dogwoodと言いますが、花弁の数も多いです。
山菜、美味しいですね。昔々、蓼科へ初夏に訪れたとき、寮のおじさんがその辺から沢山山菜を取って来て、お浸しをおやつ代わりに出してくれました。あんなに美味しい山菜はそれ以来食べていません。

結子の方が先に動き出しちゃった? 続きが楽しみです。
Commented by syun368 at 2020-07-11 03:07
fusk-enさん
この山菜 種類が凄いでしょ。
山菜のエキスパートの友達が送ってくれたんです。

ハッピーエンドが気持ちいいですよね。
たぶんfusk-enさんのご期待に添えるかと…(笑)
私はサスペンスとハードボイルドが好きなんですけどね。
Commented by syun368 at 2020-07-11 03:12
Mchappykunさん
山法師が好きで、家を建てる時シンボルツリーは絶対に山法師にしようと決めていました。

山菜は鮮度が勝負ですから近くに生えているものを採って料理するのが一番美味しいんですよね。
そして一番のご馳走ですね。

何だか結子のほうが先に結論出ちゃいそうです。
Commented by t_hcmoto at 2020-07-12 10:26
子供の頃は、オトナが山菜を食べているのが不思議でした。
草を食べていると思って見ていました。
でも、この頃は、山菜ってほんと美味しいと思います。
これから伸びていくエネルギーの先っちょをいただいているような気がします。

そんな
素敵な未来を思わせるような山菜が食卓に並んだ時に、電話が………
ああぁ心配です。
Commented by africaj at 2020-07-12 16:08
朝からバタバタ働いて、今シエスタですw
久しぶりにのんびり、今までの分も合わせて読ませていただきました。
そこで、あ♡
美味しそうにお料理してくださったあの山菜が、上手にお話の中に入っている。
こちらは、きっと広島より1ヶ月半ほど遅く季節が来ているようで、今ナヨクサフジの花が咲きそうですよー。

なんて、呑気なことを思っていたら、急展開が?!
大丈夫なのかしら、、、
Commented by syun368 at 2020-07-13 01:13
登志子さん
本当ですよね。
私も子供の頃は筍くらいしか食べなかったかも…
でもイタドリを齧ったり桑の実やユスラウメなんかは食べていました。
昔はそんなものがまわりにいくらでもあって季節の訪れを教えてくれていたんですね。

結子はそろそろきちんと決断する時期がきているようです。
ご期待ください(笑)
Commented by syun368 at 2020-07-13 01:18
africaさん
今のアフリカさん どんな生活なんだろう…
Googleマップ開くと仕事してるafricaさんが見えるかな(笑)
あの山菜、ちゃっかり小説のネタにいただいちゃいましたよ〜 季節的にもぴったりでしょ。

ゆうこ
Commented by syun368 at 2020-07-13 01:25
africaさん
寝落ちしかけて変なところで文章が終わってしまったわ(泣)
-つずき-
結子はもう中途半端な決断では収まらないところにきてしまっようですね。
by syun368 | 2020-07-10 00:37 | その他 | Comments(9)