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2018年4月○日 無量塔

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青空に春の雲がふんわりと浮かび、予想より少し早く桜は満開になっていた。
別府で列車を降り、私達はタクシーで湯布院へ向かっていた。

「今年も来れたね」と結子は言った。

結子の長男は一浪をして地元の医学部に入学し、二つ下の妹も昨年東京の大学に進学していた。
私は赤字続きの1年目を何とか乗り越え、3年目を迎えた頃から売上も落ち着いてお店は回るようになっていた。

「自分へのご褒美に、年に一回うんと贅沢をしようよ」と言う結子の提案で、私達は去年から二人だけの旅を約束していた。
若い頃いつか大人になったら泊まりたいと思っていた湯布院の「無量塔」
私にとってはまだ贅沢すぎる宿泊費ではあったが、それが1年間の自分を支えてくれるのだと思っている。

チェックアウトまでの二泊三日ほとんど外に出ないで部屋に籠り、湯船に浸かったりトランクに詰め込んできたCDを聴いて過ごす。
もし許されて若い頃訪れていたとしても、今のような満ち足りた思いを抱くことはなかったと思う。


2018年4月○日 無量塔_d0377728_17260974.jpg

こちらに来ると、本物の上質とは何かということを考えさせられる。
出過ぎない、主張し過ぎない、華美ではない。
けれど隅々まで神経が行き届き、小物に至るまで取り敢えずのものは置かない潔さ。
創業者の確かな審美眼と孤高の精神、それを継承している人々の弛まない思いが窺われる。

一棟貸し切りの宿泊棟で、何処にも出掛けない、何もしない大人の休日が始まる。




Commented by mary_snowflake at 2018-04-03 00:32
syunさん、こんばんは。
何処にも出掛けない、何もしない大人の休日、
至福です。
今になってこそ、わかる良さ、満ち足りていく思いを持つことができる…、歳を重ねることも悪くないなと、思っています。
無量塔、ホームページも見てみました。
素晴らしいお宿ですね。
いつか、行ってみたいです。




Commented by syun368 at 2018-04-03 10:05
sapphireさん
こういうことが 本当の贅沢なんだなぁ…ということ、歳を重ねてきたからこそ分かるのですよね。
若い頃はとにかく出歩く、見学する…そういうことが楽しかったですね~

無量塔は観光客で賑やかな街中から離れ、小高い山の上にありますので とても落ち着いて過ごせます。
数年前から年に1~2度訪れていますが至福の時です。
是非いらしてみてください。
Commented by africaj at 2018-04-03 13:48
聞き知っているお宿、物語を通すとこれまた楽しいですねー。
ユーミンが「中央フリーウェイ」歌った時、調布基地すぐだったり、サザンの「勝手にシンドバット」聞きつつ江ノ電乗る感覚♪
Commented by syun368 at 2018-04-03 15:31
africaさん
覚えててくださったんですね~

調布基地とか江ノ電とかっていうネーミングだけで田舎ものの私にはわくわくです。
サザン好きです!

次回は結子のびっくりの告白もあります(笑)
Commented by kei-kana38 at 2018-04-03 21:11
こんばんは。
私の憧れ「無量塔」ですね。
私もいつかこちらで何もしない大人の休日を過ごしてみたいです。
Commented by syun368 at 2018-04-04 00:58
kei-kanaさん
kei-kanaさんは お若いのですから まだまだこれから…というお話をしたことがありましたよね(笑)
私はハワイに行ったことがないんですよ。
お互いに楽しみが残っているって良いですよね。
by syun368 | 2018-04-03 00:05 | お出かけ | Comments(6)